映画『罪人たち』ついに日本公開!全米メガヒット・サバイバルホラーをネタバレ無しで徹底解説!!

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“人生最高の夜が、人生最後の夜”へと変貌を遂げ、人知を超えた狂乱の宴が幕を開ける。果たして、双子の兄弟スモーク&スタックと仲間たちは、夜明けまで生き残ることは出来るのか!? オリジナル作品として“ここ10年で最大の全米オープニング成績”を樹立し、レビューサイト“ロッテントマト”で批評家98%&観客97%の驚異的スコアを記録。観客出口調査でホラー映画史上最高評価を獲得するなど、いま話題騒然のノンストップ・サバイバルホラー『罪人たち』(つみびとたち)が、ついに日本公開!「ブラックパンサー」監督ライアン・クーグラーが放つ、全米メガヒット作をネタバレ無しで徹底解説!!

■ライアン・クーグラー監督初のオリジナル映画

ライアン・クーグラー監督はこれまで、実際の事件をベースにした『フルートベール駅で』や、 『ロッキー』シリーズから派生した『クリード チャンプを継ぐ男』、そしてアメリカン・コミッ クを映画化した『ブラックパンサー』シリーズを手掛けてきたが、自身でゼロから生み出した 完全なオリジナル脚本の作品を監督したのは、『罪人たち』がキャリア史上初めてだ。

■クーグラー監督にとって最もパーソナルな作品

『罪人たち』の始まりは、ライアン・クーグラー監督と叔父との関係だった。映画にインスピレーションを与えたクーグラーの叔父、ジェームズは映画の舞台と同じ米南部ミシシッピ生まれ。クーグラーは、幼い頃にジェームズとよく一緒に過ごしたそうで、この叔父はブルースが大好き(音楽はブルースしか聴かなかった)だった。ラジオでサンフランシスコ・ジャイアンツの試合を聞き、レコードでブルースを聴く、テイラー・ウィスキーが好きな人物だったという。ジェームズは『クリード チャ ンプを継ぐ男』の撮影中に、この世を去った。そういう意味でも、『罪人たち』はクーグラーにとって最もパーソナルな作品なのだ。

■舞台はアメリカ南部クラークスデイル

映画の舞台はジム・クロウ法時代の1932年のアメリカ南部、ミシシッピ州のミシシッピ・デルタ の一角、クラークスデイル。この街はソウル界のレジェンド、サム・クックや、ブルース界のレジェンド、ジョン・リー・フッカーの生誕地であり、同じくブルースのレジェンドで現代シカゴ・ブルースの父、マディ・ウォーターズもこの街の近くで育った。『罪人たち』は主にルイジアナ州で撮影されたが、ライアン・クーグラー監督は脚本のリサーチのためにクラークスデイルを訪れたという。人口14,000人(そのほとんどが黒人)のこの街には映画館がなく、地元住人たちは『罪人たち』を観る機会がなかったが、コミュニティのリクエストを受けて、5月29日にプレミア上映会が開催。クーグラーと妻でプロデューサーのジンジ・クーグラー、作曲家ルドウィグ・ゴランソンらが出席した。

■悪魔に魂を売ったブルース界のレジェンド

“プリーチャー・ボーイ”ことサミーによる演奏が、“招かざる者”までを呼び寄せてしまう…。おそらくこのキャラクターのインスパイアは、1911年にミシシッピ州ヘーゼルハーストで生まれたブルース界のレジェンド、ロバート・ジョンソンだ。彼は、エリック・クラプトンやキース・リチャーズ、ジミー・ペイジにも影響を与えた20世紀を代表するミュージシャンの一人。「悪魔に魂を売って超人的な歌唱力とギターテクニックを手に入れた」という言い伝えは有名だが、悪魔と取引をしたクロスロード(十字路)があるのが、前述のクラークスデイルなのだ。ジョンソンは1938年8月16日に27歳の若さで逝去した。

■メタリカ代表曲「ワン」からの影響

ライアン・クーグラー監督によると、『罪人たち』に対する自身のビジョンに影響を与えた曲があるという。彼は「なにか曲のように感じられる、コントラストと変化がある映画」にしたかったらしく、そこでヘヴィメタル界の生けるレジェンド、メタリカの「ワン」を念頭に置いたという。アルバム「メタル・ジャスティス」(88)収録の同ナンバーはメタリカの代表曲の一つ。メタリカのドラマーで創設メンバーの一人、ラーズ・ウルリッヒは『罪人たち』のスコアにも参加している。『罪人たち』はブルース・ファンやアイリッシュ・フォーク・ファンだけではなく、メタルヘッズ必見の作品でもあるのだ。ちなみに「ワン」のミュージックビデオは、反戦映画『ジョニーは戦場へ行った』(71)の映像を一部使用しているショッキングな内容。

■クーグラー監督が挙げる『罪人たち』を紐解く参考作品

ライアン・クーグラー監督は『罪人たち』が影響を受けた作品として、(特に類似性が高い)ロバート・ロドリゲスが監督したパワフルなヴァンパイア・アクション『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(96)、同じくロドリゲスが監督したSFホラー『パラサイト』(98)、コーエン兄弟の代表作『ファーゴ』(96)と『ノーカントリー』(07)、ジョン・カーペンターの作品群(クーグラーのフェイバリット・ホラーはカーペンター監督の『遊星からの物体X』)、「トワイライト・ゾー ン」シーズン3のエピソード「The Last Rites of Jeff Myrtlebank」(62)、さらにスティーヴン・キングの小説「呪われた町」(セイラムズ・ロット)を挙げている。

■中国人夫婦の登場

劇中で双子の主人公スモーク&スタックの友人であり、街で小さな食料雑貨店を営むグレースとボウの中国人夫婦が登場するが、ライアン・クーグラー監督は義父のルーツを探る中で、祖先の中に、ミシシッピ・デルタに住んでいた中国系アメリカ人がいることを発見。当時、そのエリアでは中国人が経営する食料雑貨店が多かったこともわかり、この2人のキャラクターを映画に登場させることに決めたという。

■マイケル・B・ジョーダンはホラーが苦手だった!?

双子の兄弟を初めて演じたマイケル・B・ジョーダンは、今までホラー映画が好きだったことはない。しかし、そのことが逆にモチベーションとなり、『罪人たち』への出演を決意したという。「この映画に出演したかったのは、自分の気持ちを鈍らせたかったというのが少しある。どうやってホラー映画ができるのかがわかったら、自分がその中に加わったら、ひょっとしたら少しホラー映画が好きになるかもと思ったんだ。今では以前よりもかなり好きになったね」と海外のインタビューで語っている。

■クリストファー・ノーランからのアドバイス

エンドクレジットのスペシャル・サンクスに、クリストファー・ノーランとエマ・トーマスの名前がある。一体なぜ? その理由は、『罪人たち』はIMAX®70mmフィルムカメラとウルトラ・パナビジョンのカメラで撮影されており、クーグラー監督は撮影の際に、ノーランと妻でプロデューサーのエマ・トーマスからアドバイスを受けたのだという。ノーランは『インタステラー』『ダンケルク』『テネット』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』『オッペンハイマー』そして最新作『オデッセイ』をIMAX®で撮影したエキスパート。ライアン・クーグラー監督は『罪人たち』 について「見知らぬ他人で埋め尽くされた満席の映画館で、痛快な映画を鑑賞する体験へのラブレター」だと語っている。

■追悼チャドウィック・ボーズマン

本作のプロダクション・デザイナーのハンナ・ビーチラーによると、劇中に登場する教会のXの形をした垂木は、クーグラーが監督したマーベルの大ヒット作『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』とブラックパンサーを演じた、亡きチャドウィック・ボーズマンへのオマージュだという。「X」はもちろん、ワカンダのジェスチャーだ。ライアン・クーグラー監督とボーズマンの友情、兄弟愛に泣ける。

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